恥ずかしながら、ラマーズ法といえば「ヒー、ヒー、フー」と、USのFriendsの中で出てきたヨガ教室みたいなシーンしか知らず、その呼吸法を習うのになんで丸二日(正確には、土曜3時間、日曜6時間)もかかるのだろうか、とあまり気乗りがしなかった。ちなみに、Friendsのそのシーンでは、ロス(男)が、別れた妻(レズビアン)と一緒にラマーズ教室に行くのだが、元妻の新しい旦那(女)とともに、どちらが男役をやるかで争ったりしていたことが記憶に新しい。
話を戻すと、ラマーズ法教室の数日前には、病院の施設を見て廻るホスピタル・ツアーに行ったばかりだったのだ。しかし、アメリカでは、夫は出産のパートナーであるという意識が高まり、陣痛の手助けから、出産の立会い、臍の尾のカットまでするのが常識的になりつつあるようだ。なので、Ken.Tとしてもその大きな流れに逆らってまで、ツアー群を拒否する訳にはいかなかった。
結果的には、予想を覆して非常に良い教室だった。
教室に入ると、10人以上の国籍様々な妊婦さんとその旦那さんが全員枕を持って座っており、枕を持ってこなかったのは我々だけだということに気付き早くも落第生ぎみであった。参加者の中には、女同士で来ていたり、10代くらいの子が母と来ていたりと、諸事情がありそうなカップルもいて、おおアメリカだなあ、と無駄に気をもんだりもした。
それはともかく、教室はボランティア・インスラクターの元気なおばさんJudyのもとに順調に進んでいった。陣痛の正確な知識から、陣痛を和らげるための呼吸法・姿勢、その際のパートナーのポジショニング。実際に、これは実習形式で床に寝転がったり座ったりして行った。さらに、医者との付き合い方、出産時に希望できる複数の医学的処置(麻酔など)、子宮から誕生する際の胎児の奇跡的な動き、出産時のリスクなど、広範囲にカバーした素晴らしい教室だった。ちなみに、「ヒー、ヒー、フー」は、一言も出てこなかった。
教室の中で、なにより強調していたのが、「陣痛・出産は痛いものだ、という恐怖感が、余分な痛みを生み出す」、ということ。子宮は大きな筋肉であり、陣痛は定期的にその大きな筋肉が収縮することで起こる。その際に、痛みに対する恐怖のあまり呼吸するのを忘れると、その大きな筋肉が酸素不足になり、不必要な痛みを生み出すことになる。むやみに恐れずに、普通に、呼吸をすることが大事なのだ。(子宮収縮は周期的におとずれ、出産が近づくにつれその周期は短くなっていくが、じつは、周期的に訪れる痛み自体は40秒程度しかないらしい。) この、まずは自分自身が頭の中で作り出した恐れに打ち勝つことが大事だという話は、出産に限らず、試合や仕事でも通じることだな、と妙に感心した。
なにはともあれ、後は、お腹の胎児がもう準備は整いましたとホルモンを出してそれに母親もホルモンを出し返して陣痛がはじまるのを待つだけだ。(これもラマーズ教室で得た豆知識。)予定日は8月15日、本当に楽しみだ。恐らくアメリカ出産でなければ、こんな風に深く出産に関わることにならなかったと思うとこの機会に感謝したい。
ちなみに、インストラクターのJudyはこのボランティアを毎週2回30年続けているそうだ。彼女の話は分かりやすく、時おり下ネタ?のギャグも混ぜ、本当に面白く印象深かった。日本にこんなレベルの高いボランティアが何人いるだろうか?
